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機敏な組織への転換 「Agility」のある組織の実現

IT業界といえば技術の進展もマーケットの変化も速く、生き馬の目を抜く市場の代表格です。そんななかで勝ち抜いていくためには、大企業においてもベンチャー企業なみの意思決定のスピードや、組織のフレキシビリティが求められることがあります。頭では分かっていても取り組むのは非常に難しいこの課題に、どのように向き合っていけばいいのでしょうか。

いま欧米企業の中では、「Agility」という概念がキーワードになっています。日本語訳で「機敏さ」があてられることの多い「Agility」ですが、組織をどのようにして機敏に動かしていくかについて多くの議論がなされています。世界的に有名なコンサルティングファームであるマッキンゼーは、Agilityのある組織を実現するためには「静的な要素」と「動的な要素」という矛盾するふたつの要素をどのように組織に内在させるかがキーポイントであると提唱しています。

動的な要素を単に増やすだけでは「Agility」を達成できない

静的な要素とは、大企業らしい安定的で効率よく同じオペレーションを回す体制のことを指します。これに対し、動的な要素とはベンチャー企業らしいスピード感あふれる経営スタイルを意味します。

これまで、いわゆる大企業病から抜け出すためには、静的な要素を減らし、動的な要素を増やしていけばよいと考えられがちでした。しかし少しイメージすれば分かるとおり、静的な要素を減らすことで安定的に回っていた仕事が途端にギクシャクし、動的な要素を増やすことで組織がカオス状態に陥ります。結果として、もともと組織にあったルールよりもさらに多いルールを制定して何とかコントロールを取り戻し、「やはり大企業はAgilityある組織とすることは難しい」と結論付けてしまうケースが多かったようです。

重要なのは、静的な要素と動的な要素を互いに対極にあるものとして捉えるのではなく、組織のどの要素を静的に管理するか、どの要素を動的に管理するかを見極めることです。標準化されたワークフローや組織のヒエラルキーに代表される静的な要素は、十把一絡げに「大企業病」と揶揄されがちですが、静的な要素はベンチャー企業が逆立ちしてもかなわない効率性や、リスクの低さといったメリットがあります。規模拡大や標準化によるメリットが大きい部分は静的に扱い、素早く変化する外環境をキャッチアップする必要がある仕事に関しては動的に仕事ができるようにするといったように、仕事の役割によってどちらで管理するかを考える必要があります。

「Agility」を実現するための意思決定の考え方と組織構造

では、Agilityを持った組織になるために、どのような形で意思決定をし、実行に移せば良いのでしょうか。

意思決定に関して、大企業ではそれぞれの意思決定の持つ重さと承認者の数とが一致していないケースがしばしばみられます。本当に多くの人の意見が必要なものと、思い切った権限委譲により素早い意思決定を下すものと、明確に区別する必要があるでしょう。さもなければ、素早く決断されるべき事項に無駄な時間をかけ、慎重に議論されるべき問題が十分な議論がないまま世の中に出ていってしまう、といったことが起こりかねません。また承認権限は市場の変化にも影響を受けるため、常に見直す必要があることを心がけましょう。

次に組織構造に関して、従業員に明確なキャリアパスを持って働いてもらうためには、従来から存在する明確な組織図の作成が重要です。と同時に、市場の変化に合わせて自在にチームを組みかえるフレキシビリティを持ち合わせることも求められます。この実現のためには、固定された組織図とフレキシブルなチーム体制のどちらかだけを作るのではなく、状況に応じてどちらが有効なのかを常に「使い分ける」という発想がポイントになります。通常の市場環境においては、従来型の組織図のなかで人々は働きます。しかし特定の事象が起きた場合には、組織図を超えたチームでの仕事体制を優先し、レポートラインや業績評価も従来型の組織図のとおりではなく新しく編成されたチーム単位で行う、という形です。この実現のためには、人事評価制度やレポートラインなどハード面での整備と、従業員が組織図の枠を超えて働けるようなコミュニケーションスキルやマインドセットなどのソフト面での整備の両面が必要になるでしょう。

ベンチャー企業の専売特許とも考えられかねないAgilityを持った組織は、大企業においても十分に実現可能な組織の形です。その実現のためには、静的な要素と動的な要素という2つの相反する要素をどのように同居させるかを定義づけることがますます重要になってくるのです。

参考文献 

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