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Google vs自動車メーカー 熾烈な自動運転車開発競争の裏側にあるものとは

検索エンジンからスタートしたGoogle(グーグル)は、今やITの世界を飛びだして自動運転車という、ひと昔前には漫画かアニメでしかお目にかかれなかった技術にチャレンジを続けています。自動運転車の公道テスト条件が最も整っているとされているカリフォルニア州に提出されたデータにおいては、伝統的な自動車メーカーであるフォルクスワーゲンの28倍以上にものぼる距離の走行テストをGoogleが行っていることが判明しました。もちろんこれだけでGoogleが最も優れた自動運転車を開発していると決めつけるのは早計ですが、少なくともそのアグレッシブな姿勢は見て取れるでしょう。

では、なぜGoogleのようなIT企業が、自動運転車という全く異なる土俵にこれだけの情熱を燃やしているのでしょうか。そこには、Googleが情熱を燃やすだけの理由があるとともに、伝統的な自動車メーカーが自動運転車に「情熱を燃やしきれない」という事情があるのです。

実はやりたくない!?車メーカーが自動運転車に寄せる複雑な視線

自動運転車は新たな自動車ビジネスの扉を開くとともに、伝統的な車メーカーにとっては業界そのものをひっくり返しかねない諸刃の剣でもあります。これまでの自動車における競争力とは、デザインや乗り心地といった要素以外に、いかに人間が運転しやすく、楽しく運転できるかといった点にも多くの開発力が注がれていました。数万個の部品から成る自動車は、その組み合わせ方が運転の感覚に大きな影響を与え、調整の仕方によっては運転しやすい車にも運転しづらい車にもすることができます。このノウハウが、自動車メーカーのひとつの競争力となっていたのです。

しかし、自動運転車では人間にとっての運転しやすさ・しづらさは、もはや意味をなさない指標になります。それよりも、いかに優秀なAIといかに洗練されたデータを持っているか、といったこれまで自動車とは縁がなかったファクターが商品力を大きく左右することになります(優秀なAI・洗練されたデータが、すなわち安全で乗り心地の良い自動運転を実現するからです)。最悪の場合、伝統的な車メーカーはGoogleなどのソフトウェア会社に対して「車」という部品を提供する、一介のサプライヤーに成り下がる可能性すらあります。

大手自動車メーカーに対して戦略コンサルティングを行うあるコンサルタントは、次のように指摘します。「大手の自動車メーカーは、人手を介さない完全な自動運転車を開発するだけの資金も技術力も持ち合わせている。しかし、自動運転車の存在が自社のビジネスを脅かす可能性に気づいているからこそ、全社的に力を挙げて開発することに二の足を踏んでおり、運転をアシストする機能の開発でお茶を濁している

とってもやりたい!Googleが自動運転車に没頭するワケ

対してGoogleは、自動運転車の実現により莫大なビジネス価値を生み出すことができます。自動運転のAIやデータを蓄積し、伝統的な車メーカーに対して売り出すことで、Googleは自動車産業において車メーカーのさらに上のレイヤーに位置することができます。

それだけでなく、Googleマップなどの現在展開するWebサービスとの親和性も抜群です。例えばユーザーがランチの場所を探しているとします。これまではユーザーの現在地に近いレストランを紹介するのみだったのが、タクシーのように街中にGoogleの自動運転車を配置しておくことにより、ユーザーの現在地まで自動運転車が迎えに来て、少し離れたレストランまで送り届けることも難なくできるようになります。Googleが紹介したお店からリベートをもらうようにすれば、ユーザーはタダで楽々お店にアクセスし、レストランとしても多少のリベートでこれまでにないお客にアクセスすることができるようになる訳です。

またGoogleカレンダーと組み合わせれば、ユーザーが特段操作することなく時間になれば自動運転車が会社の前まで迎えにやってきて、目的の場所まで届けてくれる、といったことも可能です。Webサービスとリアル世界に生きるユーザーとをつなぐ架け橋として、自動運転車は大きな可能性を秘めているのです。

とは言え簡単には負けない!伝統的自動車メーカーの逆襲

いかに自動運転車が業界を揺るがす可能性があるとしても、黙って指をくわえていればGoogleのようなソフトウェアメーカーに市場を欲しいままにされるだけです。伝統的な自動車メーカーにおいても、自動運転車によりアグレッシブな動きを見せるようになってきました。米ゼネラルモーターズは、自動運転車を開発するサンフランシスコのスタートアップ企業を1000億円以上の巨額を投じて買収に乗り出したと報じられました。また日産自動車は2017年にイギリスにおいて部分的ではあるものの自動運転車の販売を始めると発表。この自動運転車は完全に運転手が不要になる訳ではありませんが、道路のレーンと先行する車を認識して安全に走行するための機能が盛り込まれており、一般販売の車としては大きなステップであるとしています。

業界地図を大きく塗り替える可能性がある自動運転車技術。まだまだこのトレンドからは目が離せそうにありません。

参考文献

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宇野俊介

IT・HRコンサルタント、クロスボーダーコンサルタント。
上海・シンガポールをベースに世界を飛び回り、組織開発、人材マネジメントコンサルティング、戦略コンサルティングなどを提供しています。ITコンサルタントとしては数百億円単位の生産管理システム刷新プロジェクトにおいて、最重要モジュールの開発を指揮。カメラが趣味で、レンズの値段と銀行残高とをにらめっこするのが日課です。圧倒的な猫派。

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