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紙も好きだけれど、デジタル化すれば読める人が増えるという事実

私は紙が好きです。スマホは持っているけれど、スケジュール管理やメモは紙の手帳でやります。通勤かばんには文庫本が無造作に突っ込まれています。手紙も、メールするより便箋にしたためるのが好きです。これは、自分を含め見る人が紙の情報を扱えるのが前提になっているという話をします。

OCR (Optical Character Recognition)は、印刷物を電子ファイルに変換する技術の一つです。デジタル化することで、内容を読めるようになる人たちがいます。点字、拡大、音声読み上げなどに応用できるからです。

特定の人だけのためのものなのか

従来、主な利用者は、視覚障害のある人たちでした。情報を視覚で得られなければ、聴覚に頼ります。印刷物を耳から聞くと一言で言っても

  • 対面読み上げ(家族やボランティアが読み聞かせる)
  • 録音再生(図書館ボランティアが吹き込む、ナレーターが吹き込んだものを買うなど)
  • ソフトウェアによる自動音声読み上げ(パソコンや専用機器を使えれば一人で読める)

と、より支援者にかかる負荷が少ない選択肢が増えてきました。最近では、読んで理解することに困難のある外国人や子ども、読字障害(ディスレクシア)などの障害がある人にも効果を望むことができます。画面上の文字を追いながら音声を聞くことができるため、情報をとらえやすくなります。

もしかしたら、みなさんの中にも、目で追うより耳から入ってくる方が身になりやすいと、通勤電車でポッドキャストを聞いて勉強している人がいるかもしれませんね。情報の取り入れ方は人それぞれです。

印刷物を読めないのに一斉に配付されたのが紙だったとき、方法さえ知っていれば、自力でデジタルデータに変換して読むことができます。その方法の一つに、スキャナーの使用が挙げられます。最近はオフィス向け複合機や家庭向けプリンターにも機能としてついています。
スキャナーによって作り出されるのは、基本的に画像です。紙に印刷されているのが写真でも文字でも、画像として取り込まれ、画面に映し出されます。つまり、媒体が紙から画面になっただけで、人がそこに書かれたことを認識して理解するときの困難さは変わりません。

身近になったOCR

OCRが最初に登場したのは1990年代です。今では、PC、タブレット、スマートフォン、プリンターなど、さまざまなソフトウェアや機器に組み込まれています。OCRは文字や数字の1つ1つを見て、形の違いを認識します。スキャナーが丸ごと画像として読み込んでいたところ、OCRではテキストデータとして読み取ります。テキストデータになれば、文字色やサイズの変更、ハイライトによる強調、しおり、そして音声読み上げなど、連携するソフトウェアのさまざまな機能を活用することができます。

なお、対象の言語やフォント、使用するソフトウェアによって、変換精度に差が出ることは知っておいてください。文字パターンの少ない英語は正しく認識されやすい一方で、文字パターンの多い日本語の、とりわけ手書きの文字は誤認識されやすいといったようにです。品質の担保が難しいからか、海外ではフリーソフトやプラグインとして出回っているOCRも日本語版は少なく、あったとしても利用前に人の手による補正が必須です。ヘビーユーザーになりそうな人は、有料ソフトやOCR機能つきスキャナーを、製品比較サイトなどで探してみてください。

受け手の努力には限界がある

他の人がデジタルデータをすでに作っているのであれば、共有してもらうのも良いでしょう。反対に、あなたの変換したデータが欲しいという人が周りにいるかもしれません。しかし、著作権やセキュリティ上の制限があり、必要としている人にデジタルデータを提供できないことも多くあります。著作権もセキュリティも財産や権利の保護を目的にしており、それらの侵害は罰せられるという考えが一般的です。

障害者の著作物複製について定めた著作権法第37条では、図書を著作権者の許諾なしに複製できるのは「福祉に関する事業を行う者で政令で定めるもの」とされています。したがって、これに該当しない人は、たとえ善意からしたことであっても、法律違反として訴えられる恐れもあるのです。自炊(業者に依頼せず、自ら印刷物をデータ化すること)に後ろめたいイメージがつきまとうのはこのせいかもしれません。

法律で禁止されているからと思考停止してしまっては救いがありません。1970年代にさかのぼって視覚障害者が唱えた言葉に、「読書権」があります。紙の印刷物を晴眼者が読むに当たっては、「読みたいときに」「読める状態である」という前提があります。自分に適した方法で情報を得られないことは基本的人権の侵害である、という主張もあります。

情報を利用する人がデータを加工することに制限があるのなら、情報を提供する人が印刷物とデジタルデータの両方を用意しておき、受け取る側の状況に応じて配付する、という姿勢が最適解ではないでしょうか。内容によっては、パスワードをかけたり、印刷を禁止したりと、みだりに利用されることを防ぐことはできます。そういった手間をかけてでも受け手の利点を大切にしたいという判断が下され、助かる人が一人でも増えることを願ってやみません。

参考サイト

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DIP編集チーム N

巷の情報格差を埋めたいと言って未経験からIT業界に乗り込み十数年。情報を受け取る個人だけでなく、情報を提供する側の努力も求められると考えるようになった。それでいて、PCの操作に困った母親を助ける役割が自分からサポセンのスタッフ(日本語が母語でない)へと移り、驚きや感謝と共に一抹の寂しさも感じている。歌の歌詞をなかなか覚えられず、絶対音感を持て余し気味。

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