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【取材】ワークショップを通じてTOCに基づくCCPMを体験してみた

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プロジェクトの現場においては、常に納期の問題が重くのしかかります。納期を守るために「チームワークが大事」と頭でわかっていても、納期に追われるほどにチームが機能しなくなり、協力して取り組めば回避できる問題にも手をつけられない……。そんな経験をしている方も少なくないでしょう。

そのような状況に対して、作業の状況・遅れを管理でき、1つの目標に向かって活動することで納期を短縮できるマネジメント手法があります。その名は、クリティカルチェーンプロジェクトマネジメント(CCPM)。

このCCPMがどういうものかについて、東京の水道橋で8月7日(日)に開催されたワークショップ『チームワークを強化するCCPMを折り紙(と、カレー)で学ぼう!』のレポートを通じて考えていきます。

CCPMとは何か?

CCPMは「TOC(※)に基づき全体最適化のために考えられたプロジェクトの管理方法」です。その名のとおり、「クリティカルチェーン」を管理する手法ですが、それではクリティカルチェーンとはなんでしょうか。

プロジェクト全体のスケジュールを決定するタスクの連なり=クリティカルパスを管理する方法(クリティカルパス法など)はこれまでも行われてきました。ただ、実際のタスクには予算や作業人数などのさまざまな制約があるため、これらを考慮しないスケジューリングでは制約分だけの遅れが発生してしまいます。
CCPMでは、こうしたリソース制約を考慮したクリティカルパスを「クリティカルチェーン」と呼び、そのクリティカルチェーンを管理していきます。つまり、制約を「あらかじめ組み込む」のです。

「実際のプロジェクトでも、タスクの前後関係だけで予定を決めてしまい、リソースはその後に割り当てられることがよくあると思います。これではプロジェクトがうまく進みませんが、PMの体系を聞きかじっただけの人はこの罠に陥りやすいんです。だから、リソース制約をあらかじめチェックすることが非常に重要です」(このワークショップを主催した「TOC/TOCfE北海道」の水野昇幸氏=TOC-CCPMスペシャリスト/以下、水野氏)

※TOC=Theory of Constraints/制約理論は、システムの目的の継続的な最大化を行う全体最適の理論。全体最適の視点から一番弱い箇所や根本的な問題=ボトルネックを探し、そこを重点的に改善することで全体の改善を狙うというのが基本的な考え方。

“カレーワーク”でCCPMの全体像をつかむ

CCPMの実践においての重要なポイントは、クリティカルチェーンが決まった場合、このタスク群に対して「これ以上短くならない実施期間」まで短縮設定することにあります。この短縮設定は「遅れる前提」でかまいません。むしろ「遅れること」によって、進捗停滞を判断することが可能になるのです。

この「遅れ」をどのようにして解決するのかというと、クリティカルチェーンの実施期間をギリギリに短縮した上で、バッファ(予備領域)を用意することで吸収します。つまり、全体のスケジュールは、「ギリギリのスケジュール+バッファ」で構成されることになります。今回の例では、単純に元の見積りから半分に設定を行っています(仮に100分の見積もりなら50分に短縮)。

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概要だけは理解しにくいので、比較的簡単なワークを通じてCCPMを体験し、その運用方法を学びます。

今回のワークショップでは2つのワークを行いました。CCPM全体像を簡単に体験する「カレーワーク」の後、折り紙を作るワークを通じて現場の混乱も体感しながら、それを具体的に改善していきます。

まず、グループでカレーとサラダを作る「カレーワーク」(あくまでカレーとサラダを作ると仮定したシミュレーションゲームです)。
4人1組のグループに分かれ、カレーとサラダを作る計画を立てます。それにリソースの割り当てと、それぞれのタスクごとの見積もりを入れ、それを繋げることでクリティカルチェーンを作ります。具体的には以下のような流れになります。

1.付箋でカレー等を作るためのタスクを書き出す(例:「野菜を切る」「米を炊く」など)
2.各タスクに必要なリソースを書き出し、見積もる(例:調理時間や調理道具など)
3.タスクをつなげて全体の計画を作る
4.最も長いクリティカルチェーンを決定する

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記者が参加したチームでは、協議の結果、タスクは10個、所要時間の見積もりは96分となりました。これを今度はクリティカルチェーンの見積もりにしていきます。すなわち作業時間を全部半分にし、残りをバッファに設定します。わがチームでは作業48分、バッファも48分となります。

次に実践ですが、進捗については1~8の数字の入ったトランプを引いて出た目によって決定します。1や2といった小さい数字が出た場合はあまり計画が進みませんが、8などの大きい数字が出た場合は、大きく作業がはかどった、ということになります。いうなれば、すごろくに近いゲームだと思っていただければよいでしょう。

1.カード(トランプ)を用いて進捗を決める
2.バッファ管理グラフで進捗状況を確認する
3.遅れたチームからマネージャーが支援する(以降繰り返し)

ゲームを進めながら、全チームの進捗をバッファグラフで管理し、結果を確認。バッファが100%を超えていたら元の計画をオーバー、バッファが100%より小さいのであれば工期短縮ということになります。

「簡単なワークですが、あらかじめ制約を明確にした計画を立て、それをバッファ管理することによって遅れが具体的に見えてきます。そこで優先順位が判断できるので、たとえばチームマネージャーが一番遅れている対象を支援して全体を高速化できる、ということが体感できます」(水野氏)

 

進捗を共有することの大切さを知る“折り紙ワーク”

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次は現場の混乱状況に 比較的近い体験となる 折り紙ワークに入ります。

実際に作るもの(プロジェクト)は、ダックスフント、カモメ①(飛ぶカモメ)、カモメ②(飛ばないカモメ)とキツネの4種類。

19人の参加者で、それぞれの折り紙を全体として19個ずつ納品することとします(1人あたりではすべての動物を1種類ずつ、計4枚作る計算になります)。これが4種類あるので、19×4で合計76枚の納品です。

あらかじめチームに分けられており、自チームにおけるノルマ――仮に4人1組のチームだったら、16匹の動物を折ることに専念します。なお、折り紙は作る動物によって微妙に工程の数が異なり、難易度もさまざまです。渡された折り方のマニュアルを見つつ、それぞれのチーム内で、

「担当を決めて作ったほうが早そうですね」
「キツネは2枚で作るから、1枚で折れる動物に比べて工程が倍。どうします?」
「カモメ①が簡単そうだから、それが終わった人が手伝うことにしよう」

といった議論がなされ、方針が決まったら、次は作業時間の見積もりを出します。

各チーム平均20分という見積もりですが、カレーワーク同様、CCPM的な見積もりとして、ここから作業時間を短縮。結果、作業時間10分、そしてバッファが5分、計15分という設定になりました。これを5分ごとに区切って進捗管理をし、問題があればそのつど対処します。

最初の区切り時間で進捗を見てみると、やはり各担当で進捗度合が異なることがわかります。各チームとも難しい折り紙のセクションでは遅れが生じました。また、あるチームは「簡単なカモメ①は後回しにしよう」という作戦だったはずが、それぞれ自身の担当分が遅れているためにカモメ①に取り掛かれそうにない、という問題も発生。現実のプロジェクトでも発生しがちな状況が、この折り紙ワークでも現出しました。

そうしたトラブルに対処するべく、全体のPMとして水野氏から、余裕のある部署から納期に間に合わない部署への配置換え、および水野氏によるヘルプ作業の投入などが提案されます。

ここで重要になるのは、全体で進捗状況を共有することで、具体的に誰がどのような作業をするのかを改めて決め、より効率的な作業を目指していくということです。

……結局のところ、設定していたバッファを使い切ってしまい、プロジェクトの完遂には予定より20秒ほどオーバーしましたが、これはバッファを厳しく設定していたことによるもの。当初の見積もりが20分であったことを考えれば、約5分も工期が短縮できたというのは、まずまずの結果といっていいでしょう。

「当初はチーム内での折り紙完成という目標だったものが、全体で問題を共有したことでチームをまたぐ参加者全体での目標になり、もっとも問題を抱える箇所に人を集中させられた。チームごとにそれぞれ解決することにこだわったら、こんなに早く終わらなかったはずです。全員が納得できる一定の基準(バッファ)をもとに判断を行うことで、チームが前向きになる上に仕事の速度をどんどん上げることができる。これがCCPMの本質的な部分です」(水野氏)

まとめ

参加者の多くはIT関係の仕事をされている方たちでしたが、中には事務系の仕事をしているという方や青年実業家なども見受けられました。

今回行った2つのワークを通じて、

「制約を見つけることができれば、制約を最速にするような対策を打てることがわかった」
「マネジメントについては、わかっているつもりでも言葉にできないモヤモヤがあった。でも、ここで解消した気分です」

というように、多くの参加者がそれぞれの仕事で役立てられるという手ごたえをつかんだ様子です。

「CCPMの謳い文句に、実践すれば納期を短縮できる、ということがあります。ただ、実際にどのような準備をするのか、活動を行うのか、どのような原理が働いて効果があるか、などを事細かに理解するのは容易ではありません。そこで、まずは一連の流れを把握できるように、折り紙を使った体験型ワークショップを考案しました。折り紙ワークを通してCCPMの理論と効果の理解が少しでも深められたら、応用次第でさまざまなケースに応用ができるでしょう」(水野氏)

巷にあふれる「納期を守る方法」や、プロジェクトマネジメントの本を手に取ってみても「いまひとつピンとこない」という方に、実際に体感することで理解できるワークショップはおすすめです。

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