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1万時間の努力を実現するための「意志力」を育てる方法

「1万時間の法則」をご存知でしょうか。何かの分野で突出した才能を持つためには、ある一定の期間集中してスキル修得に打ち込むことが必要と言われており、その目安が概ね1万時間というものです。明瞭で分かりやすいこの法則は、言うは易く行うは難し、1万時間の達成には1日3時間を使っても10年かかります。英会話なり新しいプログラミング言語なり、始めてみたけれどどれも三日坊主に終わってしまうという人にとっては、途方もなく難しい話に聞こえるかもしれません。

では、それほどの長時間諦めることなく継続した努力を行うためには、どうすればいいのでしょうか。ヒントは書籍「スタンフォードの自分を変える教室」によって日本でも有名となった、スタンフォード大学の心理学者ケリー・マクゴニガル氏が提唱する「意志力」にあります。

そもそも「1万時間の法則」とは?

そもそも1万時間の法則は、どのようにして提唱されはじめたのでしょうか。心理学者のダニエル・レヴィティンは、優れた技能を持つ人々に共通する要素を調べるために、作曲家、バスケットボール選手、小説家、アイススケーター、犯罪者(!)など、さまざまな分野のプロフェッショナルを詳しく調査しました。結果、これらの人々に共通していたのは、スキルを磨くために長期間集中して打ち込むことが苦にならない、という特性でした。さらなる詳細な調査により、高度な専門技能を身に付けるためには1万時間を費やせるかどうかが分岐点となることをダニエルは突き止めたのです。

もちろん「専門技能」といっても世界のトッププレーヤーを目指すわけでもなければ、1万という膨大な時間を費やす必要性はないかもしれません。しかし、新しい技能を自分の血肉とするためには、一定期間の集中したインプット時間が必要だということはお分かりいただけるでしょう。

望んでいることを成し遂げる「意志力」とは

三日坊主が染みついている方にとっての朗報は、望んでいることを成し遂げる「意志力」は性格や先天的な要因ですべてが決まるわけではない、ということでしょう。ケリー氏は「意志力」を「人が本当に望んでいることを、その人がしたくないと思っているときにやり遂げる力」と定義しており、意識的なトレーニングによって鍛えることができるとしています。

ケリー氏は「意志力」の概念として、脳を「人間らしい考え方をする部分」と「生物のヒトとしての本能を司る部分」とに大別して説明しています。例えば、ダイエットのための食事制限を考えてみましょう。健康のためにしろ、美容のためにしろ、食事制限というのは「人間らしい考え方をする部分」が作りだす、個人の意志が働く考え方です。なぜなら野生動物としては「次にいつ食事にありつけるか分からないのだから、食べられるときに食べられるだけ食べよう」と思うのが当たり前で、「生物のヒトとしての本能を司る部分」も同様に考えます。脳のなかで、食べるべからずという思考と、食べるべきという矛盾する思考が存在することになります。「意志力」は「本能を司る部分」を上手く利用し、「人間らしい考え方をする部分」を優先させるように仕向けるためのスキルのことを指します。

「意志力」を高めるための3つの基本トレーニング

具体的に、「意志力」を高めるためにはどうすればいいのでしょうか。ここでは数ある意志力トレーニングのなかから3つを紹介したいと思います。

意志力が高まるタイミングを探し出す

意志力は筋力のようなもので、元気なときは高く、疲れを感じているときは低くなるものです。まずはあなたの生活を見直し、どんなときに誘惑に負けてしまうか、どんなときに誘惑に勝っているかを振り返ってみましょう。そうすることで、どんなタイミングで意志力が高くなるかが分かってきます。

「瞑想」を行う

意志力が高い時間帯が分かったら、その時間帯に瞑想をしてみましょう。近頃話題の瞑想は、意志力を高めるためにもとても有効だと考えられています。ヒトのような本来は「捕食される側」の動物は、常にライオンなどの「捕食する側」の動物がいないかどうか、常に周囲に気を配るような本能を持ちます。この本能による行動をきちんと律し、一定期間自分のなかにのみ意識を向ける行動が、本能を司る部分をコントロールするためのよい訓練になるのです。

スマホなどでアラームを設定したうえで、あぐらをかき、目をつむり、自分の呼吸にのみ意識を向けます。しばらくすると別のことが頭をよぎると思いますが、そう気づいたときは呼吸に意識を戻してください。この「別のことが気になる」→「呼吸に意識を戻す」という行動そのものが、意志力を高めるトレーニングになるのです。瞑想を行う時間は、人によってもまちまちですが、まずは5分程度から始めて少しずつ時間を伸ばしていきましょう。

誘惑に勝っても負けても「なぜその決断をしたか」を振り返る

「瞑想」を行うと徐々に意志力が高まり、誘惑に打ち勝つ場面が出てきます。ここで「やった、打ち勝ったぞ」と進歩だけに注目すると、元の状態に逆戻りしてしまいます。「誘惑に勝った」と自分をほめると、その分悪いことをしても構わないのでは、と自分に免罪符を渡してしまうことがあるからです。誘惑に勝っても負けても、なぜその決断ができたのかを振り返ることにより、負けた場合は次には勝てるように、勝った場合も次に勝つために何をすればいいのかが分かるようになるのです。

 

参考文献

  • 「スタンフォードの自分を変える教室」ケリー・マクゴニガル(著) 神崎 朗子(翻訳)大和書房

著者情報

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宇野俊介

IT・HRコンサルタント、クロスボーダーコンサルタント。
上海・シンガポールをベースに世界を飛び回り、組織開発、人材マネジメントコンサルティング、戦略コンサルティングなどを提供しています。ITコンサルタントとしては数百億円単位の生産管理システム刷新プロジェクトにおいて、最重要モジュールの開発を指揮。カメラが趣味で、レンズの値段と銀行残高とをにらめっこするのが日課です。圧倒的な猫派。

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