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医療現場でのAR活用 情報の可視化・集約化で従事者の負担低減、安全、効率の3つを実現

VR(バーチャルリアリティ)の発展形とも言えるAR(オーグメンテッドリアリティ<拡張現実>)は、現実の上にデジタル処理された画像を重ねられるのが最大の特長。医療現場での活用や医学教室等での臨場感の再現などに適しています。実際にどのように利用されているのか見てみましょう。

現実の難しい場面を画像処理が補う

1.   実物上への画像による情報提供

わかりやすい例としては、別の診療器などで測定した患者の血管のデータを画像情報として患者本人の肌の上に投影するなどがあります。注射や切開などの際に特定の部位を目指したり、あるいは避けたりできるわけです。経験の浅い看護師が採血の場面で助かるだけでなく、忙しいベテランの看護師にとっても負担の低減になるでしょう。手術で開腹中でも患者の臓器上に血管や隠れた臓器の位置を画像情報で表示できるので、傷つけてはいけない血管や周囲の臓器がひと目でわかります。

2.   見えない部分の可視化

鉗子(止血などで使うハサミ型の手術道具)は手術につきものです。複雑な手術ほどそれらの器具や機器のコードなどが患部や周囲に散在するようになり、執刀医の死角を増やしてしまいます。ARを使えばその器具類に隠された部分の情報を画像情報として、視界の中に示すことができます。手術箇所(臓器等)の裏側の情報をデータや別のカメラでとらえた映像などで表側からも視認できるようにしたり、細かい作業では拡大図などを執刀医の目の前に投影したりすることも可能です。

ウェアラブル端末やHMD(ヘッドマウントディスプレイ)で情報環境が飛躍的に効率化

モニターを見ながらの手術では、モニターと手もとが離れていると医師の負担を増やすばかりか、モニター上の動きだけでは実際の距離感などをつかむのが難しいことがあります。患者の体の上に映像を重ねたり近くに浮かび上がらせたりできれば、手術箇所から視線をそらすことなく手元に集中できます。身近な例ではエコー検査でもスキャン画像を操作中の端子の近くに投影することで、医師がより早く確実に検査をすることができます。

手術や検査だけでなく、患者情報の共有にもARが役立ちます。患者の疾患や治療履歴データをすべて患者本人の体の上に投影することで、カルテ情報がひとつの視界に現れます。映像とテキストからなる電子のカルテを患者の上に見ることで、瞬時に病名、疾患箇所、その治療経過を把握でき、主治医が代わる環境でも引き継ぎが容易で、取り違いなどのミスの防止に役立ちます。

遠隔医療・診療での応用

手術の映像を執刀医と遠隔にいる他の医師(ベテラン専門医等)とで共有することは以前から行われてきました。しかしリアルタイムに双方の状況を交換できるテレビ会議システムであっても、執刀医はモニターに目を向けなければなりません。なによりもベテラン医師は言葉でしか指示を伝えられません。しかしARを使えば、ベテラン医師が書き込んだ文字や画像の情報を患者の体に表示でき、指示が伝わりやすくなります。戦場や災害現場では大いに役立つことでしょう。

同じ仕組みで、授乳経験の少ない母親に、その環境や乳児の状態に合わせた最適な方法をわかりやすく伝えることなどへの応用もあります。高齢者が増え在宅医療の必要性が高まれば、薬の飲み方、家庭での医療器具の使い方などをVRでわかりやすく本人や家族に説明・指導することもできます。

VRはシミュレーターとして時と場所を選ばずリアリティのある空間や映像を目の前に示すことができます。さらにAR技術で実際の現場に再現することで、医療施設での活用のみならず、医学生の学習効率を高めることなどもできます。文字や2次元の絵、3次元の人体モデルを超えた教材となるわけで、特定の傷病を想定したシミュレーションで実地対応力の育成にも適しています。

ARの医療現場での利用事例を見てきましたが、ARはVRよりさらに「人の支援」の役割が強いテクノロジーです。アプリケーションの開発しだいで、ARの適用範囲はさらに広がる可能性があると言えるでしょう。

参考文献

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