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【取材】セミナーを通じて「OpenStack」を学んでみた

本格的な「クラウド時代」の到来により、インフラエンジニアを取り巻く環境は大きく変化しています。無線ネットワークや仮想基盤の需要拡大に伴って仕事の領域が拡大する一方、インフラの構築、運用・保守といった従来の業務は、自動化が進められた昨今ではその割合が減っているのです。また、要件定義や設計についても、サーバやネットワークの既存の垣根が曖昧になっている近年においては、インフラ全般を網羅していく必要があるため、もはや既存のスキルだけでは変化に対応できなくなってきています。ただでさえ技術の発展が目覚ましいITインフラ市場において、最大の生き残り策といえば、とりもなおさず最新トレンド技術の習得でしょう。

そこで今回は、昨年末あたりからITベンダー以外の企業でも導入が進み始めたという「OpenStack」に着目し、8月2日(火)に行われたOpenStackのセミナーの内容に沿って、OpenStackとは何か? に迫ります。

『初めて触れる「OpenStack」入門講座』取材レポート

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今回取材させていただいた『初めて触れる「OpenStack」入門講座』は、エンジ二ア人材サービスの株式会社VSN(本社:東京都港区、代表取締役社長:川崎健一郎)主催のセミナー。OpenStackが提供するコアサービスの特徴を講義で学び、その後、実際にシンプルなネットワークシステムの構築を体験します。

セミナー参加者は、これからのクラウド時代にあって自身のスキルアップを図りたいエンジニアが中心で、中心となる年齢層は30代ですが、なかには学生や50代の参加者もいるとのこと。無料の講座ではあるものの、平日夜という条件下で定員30名を超える盛況ぶりに、幅広い層からOpenStackが注目を集めていることがうかがえます。

OpenStackを理解するには、クラウドを構成する仮想技術の知識が不可欠

OpenStackは、俗に「クラウドOS(Cloud Operating System)」と呼ばれているもので、クラウドコンピューティングのための主流のオープンソース・ソフトウェアのひとつ。コンピューティング/ストレージ/ネットワーキングの仮想化のために導入されることが増えているツールです。

このOpenStackを理解する前段として、まずはクラウドコンピューティングの概念を理解しておく必要があります。そのため、実際のセミナーでも「クラウドコンピューティング入門」からスタートし、多くの時間を使って解説が行われました。

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クラウドコンピューティングは「インターネットを介して利用するコンピューターサービス」のことで、サービス提供の形態としては、SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)がある……など、エンジニアにとって、こうした知識は“常識”かもしれません。しかし、あえて基礎的な部分の解説を行った理由を、講師を務めた小口尊士氏(以下、「VSN小口氏」)が次のように語ってくれました。

「OpenStackを理解するには、クラウドを構成する仮想技術を知っている必要があり、さらにいえば、クラウドを知る前に物理や仮想を理解していなければなりません。また、タイトルにもあるとおり、基本的に初めての方を対象としているので、あえて前段としてクラウドコンピューティングの話をしました」

OpenStackとは何か

こうした理解をもとに、いよいよOpenStackの概要に入ります。

改めて「OpenStackとは何か?」を一言でいうと、オープンソースで作成された「IaaS」クラウドを構築するためのクラウドコンピューティングソフトウェア、ということができます。

Rackspace Hosting社とNASA(米国航空宇宙局)が共同で開発し、2010年10月に初期バージョンである「Austin」がリリースされました。その後は半年に1回のペースでバージョンアップが行われています(直近のリリースは、2016年4月の「Mitaka」)。

オープンソース・ソフトウェアであることから、公開されているソースコードを使って、独自に自社開発したアプリケーションを販売して収益を得ることができ、かつApacheライセンスであることから、ソースコードの開示を必要とされないという特色があります。そのため、企業がOpenStackを活用して自社サービスを開発する場合には、他と比較して非常に扱いやすいオープンソース・ソフトウェアだといえるでしょう。

OpenStackのハンズオン講習で操作方法などを知る

セミナーでは、こうした概要説明の後、実際にOpenStackを使ってインターネット上に簡単なWebサーバのシステムを構築してみました。

OpenStackはクラウドコンピューティング基盤として必要となる主なコア、もしくはオプショナルコンポーネントで構成されているため、各ソフトウェアコンポーネントの一つひとつを個別でインストールし、セットアップするには非常に手間がかかります。そのために、環境構築の手間を省くことができるディストリビューションが用意されています。数あるディストリビューションの中で、今回はハードウェア不要のOpenStackのサンドボックス「TryStack」を使用。一度試してみればわかりますが、直感的な操作が可能で、特別なスキルは必要ありません。Facebookのアカウントがあればすぐに始められるので、少しでも早くOpenStack環境に慣れたいという方にはおすすめです。

OpenStackの可能性を感じた参加者

講師の説明に沿って、参加者が持参したPCで作業を行います。途中、慣れないせいかスムーズに作業が進まない参加者もいましたが、理解してしまえばさほど難しい操作ではないことや、また講師の手助けなどもあり、最終的にはほぼ全員が課題となった構成をクリアしました。

セミナー終了後、参加者からは、
「OpenStackの概要についてイメージがつかめた」
「実機を使った講義だったためGUI上の操作で動かしやすく、説明もわかりやすかった」
など、セミナー内容に対しては、おおむね好意的な声が寄せられました。

今回は初歩的な内容でしたが、
「OpenStackの構築について、もっと詳しく知りたいと思った」
といった声も多く、セミナーを通じてOpenStackの可能性について深く考えさせられた参加者が非常に多かったようです。こうした声を受け、主催者側としても、引き続きOpenStackに関するセミナー開催を検討しているといいます。

「グローバル社会の中でのキーワードのひとつに『スピード感』があると思います。サービスをリリースするにあたっては、どれだけ短い期間で開発をし、かつ売るかが勝負。したがって、迅速な開発を可能にする環境の構築ということが非常に重要になってきます。そこで求められてくるのがクラウド環境であることは疑いないでしょう。エンジニアが生き残りを図るための答えのひとつが、OpenStackのようなクラウドOSの習得になるのではないでしょうか」(VSN小口氏)

増加する需要に対し、エンジニアが足りない

OpenStackの市場における可能性については、
「今後のプライベートクラウド市場が2016年の約6200億円に対して、2019年までに1兆8000億円と3倍の予測が出ています」(VSN小口氏)
とのこと。

それでは、高まる需要に対し、そうしたトレンドに対応可能なエンジニアが現在どれほどいるのでしょうか。小口氏は「あくまでも私の肌感覚ですが…」と前置きしたうえで、次のように語ってくれました。

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「ITエンジニアの数が大体100万人と言われている中で、1000人もいないのではないかと思います。割合にすると0.1%未満ですね。少なくとも2020年までというスパンのなかでは、ITを専門としていなかった企業でもOpenStackの導入は増えていくはずで、たとえば、IoTによって、いろいろなところから吸い上げたデータをどのように分析していくかということにおいて、分析基盤の中にOpenStackを入れることなどが考えられます。現時点では、そうした活動を行うエンジニアの数が絶対的に足りないため、今回のように当社の持つ知識・スキルを広めることで、個々のエンジニアのキャリアアップ、そして社会全体の役に立てたらと思っています」

今後、インフラ構築のためのスタンダードに成長しうる可能性を持ったOpenStack。クラウド時代を生き抜くため、インフラエンジニアがぜひ注目しておきたいツールのひとつでしょう。

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