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世界の英知TED Talksセレクション1:人間とコンピューターの協力関係

世界の英知が集うとも言われるTEDには、自身のキャリアを豊かにする知識やノウハウが多くアップロードされています。今回はそのなかからシリコンバレーのPalantir Technologies社にてダイレクターを務めるシャム・サンカー氏による「人間とコンピューターの協力関係のはじまり」をご紹介します。

よりパワフルに進化したAIやビッグデータは容赦なく人々の仕事を奪う、という悲観的な予測がいたるところでなされています。もちろんこれらのIT技術が特定のワーカーの代理を務め、一定数の人が窮地に追いやられることは間違いないでしょう。しかしAIやビッグデータは仕事を奪うことで人々を不幸に陥れるだけではなく、人々の生産性や可能性を拡げる役割も担うと考えられています。

人間とコンピューターの混合チームによるチェスの対局

2016年3月にGoogleが開発した人工知能のアルファ碁が、世界で最も強いとされている韓国の棋士を破ったというニュースが話題になりました。人工知能が人間の頭脳を打ち破った象徴的な一戦となりましたが、ではコンピューターと人間がタッグを組んで行う試合の場合、どんなチームが勝つのでしょうか。

2005年、スーパーコンピューター、汎用コンピューター、プロのチェスプレイヤー、普通のチェスプレイヤーの4者が自由にタッグを組み、どのチームが1位になるかを競い合うチェスの試合が開かれました。スーパーコンピューター vs プロのチェスプレイヤー+汎用コンピューターチームの試合では、プロと汎用チームが勝利を収め、ここまでは予想通りの展開でした。下馬評ではプロ+スーパーコンピューターの組み合わせが1位を取ると予想されていましたが、なんとトップに輝いたのは2人のアマチュアプレイヤーと3台のラップトップを用いたチームでした。

人間とコンピューターが「正しい」協力関係を構築すること

2人のアマチュアプレイヤーが協力したところでプロには到底かないませんし、3台のラップトップの性能を足し合わせてもスーパーコンピューターの足元にも及びません。しかし、2人のアマチュアプレイヤーと3台のラップトップチームは、より効果的なチーム運営を行う体制を敷くことで、2人+3台のパフォーマンスを最大化することに成功したのです。

この対局は、人間とコンピューターの混合チームによるパフォーマンスは、人間が持つ知識量とコンピューターの持つ処理能力の単純な足し算ではなく、それらをどのように利用するかが重要なカギを握ることを示唆しています。人間の脳は非線形的なアプローチや想像力などの分野においては優れた性能を持ちますが、定型的な仕事の処理には一定の限度があります。一方コンピューターはその逆で、定型的な仕事の処理においては素晴らしいパフォーマンスを発揮しますが、非線形的アプローチを行うためには比較的不向きです。このように人間の脳とコンピューターは互いの強みと弱みを補完する関係にあり、この特徴を上手く活かすことで、より高いレベルのパフォーマンスを出せるようにできると考えられています。

人間とコンピューターのタッグがすでに生み出している成果

人間とコンピューターの協力チームは、単純なチェスの試合にとどまらずさまざまな分野で応用がなされています。例えば、人間がかかる病気の根本原因を探るためには、病気や免疫システムに関わるたんぱく質の構造を理解することが重要だと考えられています。しかしたんぱく質の構造は非常に複雑で、宇宙に存在する原子の数よりも多いパターンを持ち、スーパーコンピューターをもってしてもその解読は困難を極めます。

そこでコンピューター科学者がたんぱく質の構造解析のために、Folditというゲームを開発しました。このゲームにおいて、科学者でもなんでもないプレイヤーたちは、持ち前の人間らしい想像力を活かしてたんぱく質の立体構造を組み替えるという作業に取り組みます。コンピューターは、ゲームプレイヤーが作り上げた構造を一定のルールに従い解析するという役割を担いました。この組み合わせで作られたたんぱく質に関するデータは、スーパーコンピューター単体の計算結果と比較して50%のケースでスーパーコンピューターを上回り、30%のケースで同等の結果を出すことができました。

このように、コンピューターと正しい向き合い方を学ぶことで、スーパーコンピューターをも凌駕するパフォーマンスを出すことができるのです。これからの世界で成功するためには、AIやビッグデータは人々の仕事を奪うものとして忌み嫌うのではなく、それらと正しい関係を構築するためのスキルが非常に重要になっていくでしょう。

参考文献

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